中国人の書いた中国語学習書には、方言の説明として、広東語が一番難しいなどとあるものがあります。
現代の共通語である普通話にない「入破音・にっぱおん」が広東語にはあることと、声調が九つあるということからの印象でしょう。
ところが、日本人には広東語のほうが習得が簡単です。
なぜなら、日本の漢字音の漢音に似ているからです。
例えば、六十一という数を普通話では「liu shi yi」と言うのに対し、広東語では「luk sap yat」と言います。
日本の古語では「ろくじふいち」と書きますが、ハ行はP音だったことが予測されていますから、「lok zip yit」のような音だったでしょう。
音声自体も、そり舌音などなく、日本語に近いものです。
広東語の入門書にも現在はいろいろあります。その中でも比較的古い『初めて学ぶ広東語』という、千島英一氏の著作は発音に細かく、優れています。
千島氏は、広東語のローマ字表記を音韻論に従って新たに作った人でもあります。
絶版のようですが、古本がまだ入手可能ですね。